先天性代謝異常症は、人体にとって重要な役割を果たす酵素の量あるいは質の異常によって発生する。酵素の異常から原因遺伝子が判明することよりも、ある症候群の患者に共通する遺伝子異常から、酵素が発見されて病態が解明されるケースがむしろ多い。
フェニルケトン尿症
12q22-q24.1に位置する、phenylalanine hydroxylase(フェニルアラニン水酸化酵素)遺伝子の異常によって発症する。遺伝形式は、常染色体劣性遺伝。主症状は中枢神経障害であり、生後数ヶ月からの発達遅滞、けいれん(重症の場合、点頭てんかんの症状を呈する)など。新生児マススクリーニング対象疾患であり、食事療法により症状の進行を止めることができる(症状が軽症のうちなら、改善することもありえる)。
ビオプテリン代謝異常症
テトラヒドロビオプテリンの生合成系、または再生系酵素の先天性異常による疾患で、典型的には高フェニルアラニン血症を呈し、フェニルケトン尿症と同様の症状(ただしフェニルケトン療法の食餌療法に反応しない)となる。原因となる遺伝子異常は複数あり、いずれかひとつの異常で発症してしまう。テトラヒドロビオプテリンおよび神経伝達物質の補充が必要。多くの病型は常染色体劣性遺伝だが、常染色体優性遺伝の形式をとるものもある(瀬川病)。新生児マススクリーニングでは、フェニルケトン尿症疑いとして発見される。
メープルシロップ尿症
α-ケト酸代謝障害による疾患で、分枝鎖α-ケト酸脱水素酵素複合体を形成するE1α、E1β、E2、E3のいずれかの異常で発症する。原因となる遺伝子変異は、60種類以上報告されている。低血糖・ケトアシドーシスによる意識障害発作を起こし、かつ異常代謝産物の蓄積や脳浮腫により神経症状を来たす。新生児マススクリーニング対象疾患。
ホモシスチン尿症
メチオニンの代謝産物であるホモシスチンが体内に蓄積することによる疾患である。これも原因となりうる酵素は複数あり、報告されている遺伝子変異の種類も多い。症状は眼症状(水晶体脱臼、近視、緑内障、白内障)、中枢神経症状(知的障害、けいれん)、骨格異常、血栓塞栓症など。食事療法、ビタミンB6補充療法などを行う。新生児マススクリーニング対象疾患。
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白皮症
皮膚や虹彩でのメラニン産生が障害されていることによって起こる疾患。チロジナーゼ欠損症は常染色体劣性遺伝であるが、他にも少なくとも3つの病型で責任遺伝子が明らかになっている。色素欠損のため、全身の皮膚は白く、毛髪は金髪ないし白髪。虹彩は毛細血管のため赤く見えるが、遮光性が不十分であるため、白皮症患者は著しい羞明(まぶしがること)を呈する。
メラニンの欠損はヒト以外の動物にも起こる。この最もわかりやすい例は白い毛皮に赤い目を持つウサギで、アルビノのウサギ同士を交配して飼育用としている(常染色体劣性遺伝なので、色のあるウサギと交配するとアルビノは生まれない[要出典])。
色素性乾皮症
Xeroderma pigmentosumの略でXPと表記される。生物の細胞には、紫外線照射により傷ついたDNAを修復する機構が存在している。このDNA修復機構が障害されている疾患が色素性乾皮症である。
色素性乾皮症患者では、皮膚への紫外線(日光)照射により容易に皮膚の発赤・腫脹を生じる。やがて雀斑(そばかす)状の色素沈着が出現し、紫外線遮断策をとらなければ小児期に皮膚癌(基底細胞癌、扁平上皮癌、悪性黒色腫など)を生じる。皮膚癌発症の平均年齢は8歳。そのほか、小頭症、精神発達遅滞、難聴、歩行障害など神経系の合併症を認める。
A-Gおよびvariantの8群に分類されており、それぞれに責任遺伝子や予後が異なる。治療は徹底した紫外線遮断を行い、皮膚癌の早期切除につとめる。発達遅滞、歩行障害、難聴に対するリハビリテーションも重要である。生命予後は、かつては皮膚癌の全身転移も問題であったが、腫瘍の早期切除が行われるようになってからは、嚥下困難による誤嚥性肺炎や中枢性呼吸停止など神経症状により決まるようになっている。